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印刷開始位置の設定を試す

造形物の側面に、データ上は存在しない溝のような構造が出来ることがあります。

たとえば、次のようなものです。
フィギュアの足の側面
フィギュアの足の側面
これは少女フィギュア風モデルの足ですが、3回出力した側面の同じ場所に、同じ垂直の溝が生じています。

普段は、この程度の造形の乱れは問題にならないのですが、今回は、前面にさらに大きな造形の乱れも生じました。
フィギュアの足の前面
フィギュアの足の前面
側面と同じく、3回出力した前面の同じ場所に、同じ造形の乱れが生じています。

最初は、ハードの調子が悪いのかと思ってネジを締めたり、何かの偶然かもしれないと思って、複数回出力したりしました。
しかし、調整しても同じ場所に同じような不具合が出るため、ハードや偶然ではなく、3Dプリンタに送っている印刷データに何らかの原因がありそうです。

そこで3Dプリンタの出力過程を見ていると、この溝や造形の乱れは、各レイヤーの印刷開始位置と一致していることが分かりました。同時に、前面の造形が乱れ始めるところは、ちょうどそのレイヤーで最も大きいオーバーハング部分であることも分かりました。

想像するに、印刷開始位置ではフィラメントの出力が途切れるので、綺麗に繋がらないことがあり、それが側面の傷として現われるのでしょう。そして、垂直の溝が出来るのは、上下のレイヤーで印刷開始位置が同じだからであり、造形が大きく乱れるのは、もともと印刷が乱れやすいオーバーハング部分が印刷開始位置だからでしょう。

原因らしきことが分かったので、Slic3rの印刷開始位置の設定を変更してみることにしました。

印刷開始位置の設定
Slic3rの設定画面で「Print Settings」タブを選択し、「Layers and perimeters」を選択します。
「Print Settings」タブの「Layers and perimeters」画面
「Print Settings」タブの「Layers and perimeters」画面
この画面の「Advanced」→「Seam position:」が、各レイヤーの印刷開始位置の設定です。次の3種類が選べます。
  • Random:各レイヤーで異なる位置をランダムに選択。
  • Nearest:凹状の非オーバーハング頂点を選択。存在しない場合は、凸状の非オーバーハング頂点を選択。いずれも不可の場合、非オーバーハング頂点を選択。候補の中で前のレイヤーの開始点に近い点を選択。
  • Aligned(標準):Nearestと同じロジックだが、前のレイヤーの開始点に最も近い点を選択。これは、つなぎ目が整列することを意味する。
Slic3r.orgに掲載されているドキュメントの理解が正しければ、今回のような場合は「Nearest」を選べば良さそうです。しかし、標準の「Aligned」でもオーバーハング部分から開始点が選ばれているのは変です。「Aligned」と「Nearest」がどう違うのかもよく分かりません。

そこで今回は、開始位置をランダムに変化させる「Random」を選択してみました。
フィギュアの足の側面:Aligned(左)とRandom(右)
フィギュアの足の側面:Aligned(左)とRandom(右)
予想通り、垂直の溝が消えました。
また、前面の造形の乱れもほぼ解消されました。
フィギュアの足の前面:Aligned(左)とRandom(右)
フィギュアの足の前面:Aligned(左)とRandom(右)
正確には各レイヤーの傷が消えたわけではありません。「Random」のほうをよく見ると、傷の位置が分散していることが分かります。

垂直の溝が目立たない場所に出来る場合は「Aligned」のほうが造形品質が高いですが、今回のように、溝が目立ったり、大きく造形が崩れてしまう場合は、「Random」のほうがよさそうです。

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