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二重関節を作る(4)

最低限動く水準の二重関節を作り、動作を検証します。
可能な限り小さな二重関節を作りたいので、今回は1mm以下の構造を多用してみました。

組み立てたデルタ型3Dプリンタは、思っていたよりもずっと綺麗に造形してくれるのですが、やはり精度として信頼できるのは1mm単位が限度と考えたほうがよさそうです。1mm以下の造形も可能ですが、それが具体的にどのような状態になるかは実際にやってみなければ分からず、出力結果を確認しながら設計を修正する作業を繰り返す必要がありました。

Type2からいろいろあって、完成した二重関節(Type5)は、こんな感じ。
二重関節(Type5)
二重関節(Type5)
バネとバイオメタルファイバー(BMF)で動きます。関節の初期状態は、バネで180度曲がっており、BMFに通電して縮むことで関節が伸びます。
バネとBMF固定用端子は、BMFのパッケージに入っていたものを流用しています。

Fusion 360の設計はこんな感じ。
二重関節(Type5)の設計
二重関節(Type5)の設計
BMFを確実に通せるよう、各部に最低限の余裕をもたせた結果、Type2よりもやや大きくなりました。
二重関節(Type5)の内部(Bottom側パーツ)
二重関節(Type5)の内部(Bottom側パーツ)
二重関節(Type5)では、CenterもTopとBottomの上下2つに分割したので、計6個のパーツで構成されます。各パーツは、棒ヤスリと紙ヤスリで細かな造形を整え、ピンバイスで正確な穴を開けて完成。

ネジ穴
BMFを固定するM2ネジ用のネジ穴を1.6mmで開けて、タップでネジ穴を切ります。

PLAにネジ穴を作るのは初めてでしたが、なんの問題もなくM2のネジ穴が作れて、このネジ穴にM2×3mmのネジを確実に固定できることを確認できました。これからは、このネジを中心に使うことにします。

BMFの折り返し軸
Leftに設けるBMFの折り返し軸には、直径2mmの真鍮パイプを使いました。
この穴を2mmで開けて真鍮パイプを押し込むことで、LeftのTopとBottomを接着せずに固定できるようにします。

BMFの折り返し軸には、BMFの太さの40倍以上、あまり動かない場合でも20倍必要らしいので、BMF 150(0.150mm)の折り返し軸が2mmというのは、少し細すぎます。

今回は関節を小さくするために、プーリーなども使わず、あえて2mmの真鍮パイプを使ってみました。これで上手くいけばいいのですが、ダメならより太い真鍮パイプやプーリーの使用を考えます。

関節軸
関節軸にも直径2mmの真鍮パイプを使いました。この関節軸はBMFを曲げる役割もあります。

関節軸はCenterに固定するので、LeftとRightの関節軸用穴を2.1mmで開けて、Centerの関節軸用穴を2.0mmで開けました。

PLAの接着
LeftはBMFの折り返し軸でTopとBottomを固定できますが、CenterとRightは、TopとBottomを接着剤で固定します。
PLAの接着にはアクリル用接着剤がいいようですが、近所に売っておらず、Amazon.co.jpでも送料を含めるとアロンアルファの3倍近い値段がするようです。
アロンアルファは2gしかないので単純には比較できませんが、今回は絶対的な値段を優先して、「アロンアルファ プラスチック用」を使いました。結果として、「アロンアルファ プラスチック用」でも、私の目的には十分な強度で接着できました。
 

Centerの組み立て
Centerを接着し、関節軸を通します。
Centerの組み立て
Centerの組み立て
CenterをTopとBottomに分割したのは、一体で出力したパーツには、BMFを通す内部構造の精度に問題があったからです。
しかし、結果としては、接着した後に内部を1mmのドリルで綺麗にする必要があったので、接着の手間が増えただけかもしれません。これなら一体で出力してもよさそうです。

Rightの組み立て
Rightを、Centerの右側関節軸に接続して、接着します。バネもこの段階でつけました。
Rightの組み立て
Rightの組み立て
Centerの軸が微妙に垂直からズレていたようです。そのため、 Rightのパーツを素直に接続できなかったので、Rightの軸穴を軸の傾きに合わせて広げて組み立てています。この程度は精度的に止むを得ないでしょう。

Leftの組み立て
Leftを、Centerの左側関節軸に接続します。BMFの折り返し軸で固定されるので、接着はしません。
Leftの組み立て
Leftの組み立て
Right側と同様に、Centerの軸が微妙に垂直からズレているので、軸穴の修正が必要でした。

組み上がった関節は、ガタつきもなく、スムーズに動作します。
このサイズでこのレベルの構造が作れるなら、3Dプリンタには私の目的に必要な性能があります。キットを購入したのは失敗ではなかった、と言えそうです。

ただし、Left、Rightともに設計段階ではこのような修正を考慮していなかったため、稼働するパーツ間の余裕がなくなってしまいました。もう少し、余裕をもたせた設計にする必要がありそうです。

BMFの組み込み
BMFを組み込みます。BMFの両端は、M2ネジとメガネ端子で挟んで止めます。
BMFが非常に細いうえ、目が悪いので、この作業にいちばん苦労しました。

動作チェック
BMFのメガネ端子に電源をつないで、二重関節がどのように動作するかを確認します。
二重関節Type5の動作チェック
二重関節Type5の動作チェック
結論を言えば、3割成功というところでしょうか。まだ先は長そうです。

BMFに通電すると、関節が45度くらい曲がりました。これは、バネを外しても同じ。
設計では、BMFが4%変位すると180度曲がるので、1%程度の変位ということになります。この場合、単純計算では4倍の長さのBMFが必要です。確認のため、手元にあるBMFを無負荷状態で通電して長さを測ると、2%前後変位しました。BMFを2mmの真鍮パイプ4本で折り曲げる抵抗や誤差は、予想以上に大きいのかも。

また、動作を繰り返していると、BMFがRight側のPLAパーツに食い込むことがあるようです。見えない場所なので状況を確認できませんが、BMF経路が1mm幅では狭すぎるのかも。

二重関節Type5では、サイズを小さくまとめることを最優先しましたが、次は、1.5倍くらいのサイズでプーリーを使う二重関節を作って、動作を比較してみます。

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