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ノズルの持ち上げ設定を試す

二重関節の作業はパーツが揃うまで一時休止。でも先立つものが……。
とりあえずフィラメントはあるので、美少女フィギュア風モデルを出力してみます。おかげでいろいろなことが分かりました。

データは、thingiverseから「Daniel 's swimming suit girl」をダウンロード。
Daniel 's swimming suit girl
Daniel 's swimming suit girl
http://www.thingiverse.com/thing:980315
最初、胸像や二重関節などと同じ設定で出力してみましたが、上手くいきません。
この美少女フィギュア風モデルは、細長いパーツが垂直に立ち上がる向きに造形される部分が出てきます。そこで出力に失敗するのです。

たとえば寝かせた姿勢で出力すると、非常に小さい足の指先から始まり、上にいくほど太くなります。指の下にはサポート材も造形されるので、造形ベッドとの結合はさらに弱いでしょう。

これは以前から気になっていたことですが、このデルタ型3Dプリンタは、ノズルが移動する際に造形したパーツと衝突することがあります。
これまで出力してきたモデルは、チェスの駒や胸像、二重関節など、ある程度の太さがあり、主に上にいくほど細くなるか、そもそも高さが低いモデルだったので、ノズルがぶつかっても造形に失敗することは稀でした。

しかし、この美少女フィギュア風モデルは逆で、上にいくほど太くなり、しかも細長い。そのため、ノズルがパーツにぶつかったとき、造形したパーツが倒れてしまうのです。

最初は、モデルの向きを工夫したり、レイヤー高を厚くしたりしましたが、一向に改善しませんでした。
そこで、これまで使っていなかった、ノズルの持ち上げ設定を試してみました。

Slic3rのノズルの持ち上げ設定
Slic3rでは、ノズルが移動する際の設定として、「フィラメントの引き戻し」と「ノズルの持ち上げ」を指定できます。
これまでは、移動時にフィラメントが糸を引く問題を解決するため、フィラメントを4mm引き戻す設定にしていましたが、今回はこれに加えて、ノズルの持ち上げを試してみます。

ノズルの持ち上げは、出力場所を移動するときに、ノズルをいったん上に移動し、その後ノズルを目的地の上まで移動して、ノズルを下げる、という動作です。

ノズルの持ち上げは、Slic3r設定画面の「Printer Settings」タブで設定します。
Slic3r設定画面の「Printer Settings」タブ
Slic3r設定画面の「Printer Settings」タブ
「Printer Settings」タブを選択し、左側のリストから「Extruder 1」を選択。
ノズルの持ち上げの設定項目は「Retraction」エリアにあります。
  • Lift Z:ノズルを持ち上げる高さ
  • Minimum travel after retraction:ノズルの持ち上げを行なう、ノズルの最低移動距離
  • Retract on layer change:出力するレイヤーの変更時にノズルを持ち上げる
今回は、以下の値を指定しました。
「Lift Z:」に「2」を指定し、移動時に2mm持ち上げます。これで衝突するなら、そもそも造形に失敗しているでしょう。
「Minimum travel after retraction」に「2」を指定し、ノズルが2mm以上移動するときだけ、ノズルを持ち上げます。ノズルを持ち上げると、その分だけ確実に出力時間が長くなるので、場所を大きく移動しないときは、持ち上げないようにします。
「Retract on layer change:」にチェックを入れて、出力するレイヤーを変えるときもノズルを持ち上げます。

下半身パーツの出力
さっそく、出力してみます。
ダウンロードしたデータには、体全体のデータと、出力しやすいように分割したデータが含まれていますが、ここでは下半身のデータをそのままの向きで出力してみました。

出力自体はとても順調。
目論見通り、これまでときどき聞こえていたガツンガツンという音がまったくしません。やはり、ノズルと造形物との衝突音だったようです。

しかし、ノズルを持ち上げても、そもそもノズルが衝突していた原因がなくなったわけではありません。
出力を続けると、造形物のオーバーハング部分が上向きに反り返りはじめました。
左足の造形 左側が反り返っている
左足の造形 左側のオーバーハング部分が上向きに反り返っている
オーバーハング部分の先端が2mm近く反り返っています。これをノズルで上から押さえつけながら造形が進んでいきます。また、この写真でわかるように、ノズルを持ち上げると、フィラメントが非常に細い糸を引くようになりました。

右足も同じような状況ですが、出力自体は失敗することなく、造形が進行。

が、左足はそう幸運ではなく、とうとう反り上がった部分を造形しようとしたときに、サポート材との結合部分で折れて倒れてしまいました。
右足が、サポート材との結合部分で折れた
左足が、サポート材との結合部分で折れた
残念ですが、失敗です。ここで出力を中止して、検討します。

造形結果
まず、オーバーハング部分の出力を乗り切った右足を確認。
右足の造形
右足の造形
全体的に見ると、非常に綺麗な積層です。拡大した写真を見ても、積層のズレがほとんど見えません。26mm程度の積層ですが、これまででいちばん上手くいきました。

同時に、反り返ったオーバーハング部分(踵の部分)で、積層が乱れていることも分かります。

次に、造形に失敗した左足を確認。
左足の造形
左足の造形
むちゃくちゃ反っていますね。これを上からノズルで押さえれば、そりゃ弱い部分で折れます。
積層は右足同様に非常に綺麗です。失敗したのが残念。

どうすべきか……
ノズルを持ち上げる設定は、造形品質の向上という面では効果がありました。造形時間が伸びるのは痛いですが、待てないほどではありません。糸を引くのも、非常に細いので、綺麗に除去できるし、許容範囲でしょう。狭い場所では困りそうですが……。今後も、ノズルを持ち上げる設定で出力することにしましょう。

問題は、オーバーハング部分で反り返ることですね。反り返るかどうかは、角度だけでなく、大きさや厚みなども影響しているようです。Slic3rの設定だけでなく、モデルの向きも合わせて工夫が必要か。まだまだ工夫しなければ。

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